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最新講義レポート

REPORT

最新講義レポート

「国宝!白滝旧石器体験」

歴史学部 白滝キャンパス 「本吉 春雄 教授」緊急特別講義レポート

2023年10月13日(金)〜10月15日(日)

 第1日(10/13)

入学式・
オリエンテーション

林学長(創設者)自らが、入学のお礼と改めて本学のコンセプトの説明、スケジュール確認があり、本吉教授から講義のオリエンテーションがありました。

 

本吉教授からのオリエンに、気持ちも高まります。

いよいよ1日目の講義がスタート。最初は黒曜石と旧石器についての学びです。

集合場所の白滝ジオパーク交流センターで黒曜石誕生について本吉教授の解説を聞きながら、講義が進行していきます。次に2階の埋蔵文化財センターへ移動。いよいよ「国宝」の「白滝遺跡群出土品」と感動のご対面です。考古学専門の学芸員の詳しい解説にさらなる感動を覚えます。

 第1日目の体験教室

なんと黒曜石の石器づくり体験でした!

本物の「黒曜石」原石を一人1個渡されて、あの尖頭器をつくるのです。さっき詳しい解説を聴いたばかりの旧石器人が使った「槍の先につける尖頭器」を鹿の角と石を使って薄く割りながら仕上げていきます。皆もう夢中です。

 

貴重な黒曜石を、なんて贅沢な体験教室なのでしょう!

力の入れ方や叩く方向で、思いも寄らない方向に破れたり。あっと言う前に小さくなっていきます。あー!

 第2日(10/14)
体験教室①(午前)

あじさいの滝トレッキングツアー

午前中は、現地専門ガイドによるトレッキングツアーです。林道を1列になって登り、黒曜石溶岩から噴き出す滝、深山渓谷の「あじさいの滝路頭」を目指します。

 

あちこちに黒曜石がゴロゴロと。旧石器当時のまま。

専門ガイドから地形や火山の成り立ちについての詳しい解説もありました。

 体験教室②(午後)

黒曜石トレイルツアー

午後からは専門ガイドと共に日本最大規模の黒曜石産地「赤石山」へ、トレイルツアーです。自然観察をしながら山を登り、「八号沢露頭」を見学します。

 

地形からDNA遺伝子の解説まで。旧石器は奥が深い。

センターに戻り、今日1日のまとめの解説がありました。

わかりやすく、幅の広い解説がとてもうれしいです。「資源には限りがあります。その資源をどう生かすか。この旧石器は私たちに問い掛けているのです。」(ガイドの熊谷 誠さん)

 第3日(10/15)
体験教室③

山彦の滝トレッキングツアー

裏見の滝と呼ばれる「山彦の滝」の成因やアイヌの人たちの伝説、丸瀬布の自然と森林鉄道との関わりを学びます。

 

ヒグマの生息地に入りますので細心の注意を払います。

VOICE

受講生の声

S.Sさん / 北海道在住

そのタイトル通り、私の気持ちを鷲掴みしたのは、まず「国宝」、そして「石器体験」の2文字でした。少し前、新聞で白滝遺跡群が国宝に指定されたのは知っており、このツアーは行くだけの価値がある!とチラシを見た瞬間、参加を決めました。

実は私の住いは十勝地方ということもあり、通称「十勝石」は慣れ親しんだ石でもありました。近くの河原を歩けばどこにでもある石程度の受け止め方でした。
しかし、所変われば同じ石でも国宝級に格上げされるとなると、何がどう違うのか?そこがまず一番の関心事でした。さらにHK大学の講座には必ずその達人がおり、今回はどんな方がどんな話をしてくれるかそれもすごく楽しみでした。

私たちがまず目指したのは白滝ジオパークセンター(遠軽町旧白滝村)でした。そこで白滝地区の地形の成り立ちや、なぜ遺跡として発見されたかなどを学芸員から詳しい解説を聞き、いよいよ遺跡群の石器を目の当たりにしました。それはもう石というより、工芸品、いや芸術品をみているかの様な錯覚に陥るほど、展示している遺石の数々は緻密で精巧で、形状もバリエーションに富み、これが大昔に人の手で作られたと思うと息をのむ光景でした。そこで初めて国宝たる所以がわかりました。私が知る十勝石とは違い、明らかに後期旧石器時代の人々がその意図をもって黒曜石を割り、形を整え、道具として使ったであろう痕跡を残した”宝物”がそこにありました。

次には、実際に専門家の手ほどきを受けながら黒曜石で石器を作る体験が用意されていました。手渡されたのはゴーグルに軍手、鹿の角に牛皮のひざ掛け、そして手のひらぐらいの黒曜石のかけらでした。黒曜石を太ももの上に置き鹿の角で角から叩くとパリン!と砕け、薄い破片がこぼれるとそこに鋭い刃が現れ、その鋭さは一目瞭然でした。叩く場所、叩く角度が呑み込めると面白ほど鋭くなっていきました。出来上がる頃には5分の1ほどの小ささになりましたが、何とかヤリ型の尖頭器状に出来たときは一つ人として賢くなった気がし、ただ話を聞くだけでなく自ら作りお土産として持って帰れるのは格別な嬉しさです。

翌日には、黒曜石が露出するあじさいの滝へトレッキングツアーへでかけ、日本最大級の黒曜石の産地「赤石山」や八号沢露頭なども見学。約2万年前の旧石器人がどのようにして黒曜石を見つけ、掘り、運び出したか、それを思うとこの黒い石たちが何か私たちに語りかけている様な気がして不思議な気持ちになりました。この間ずっと帯同していただいた達人、本吉春雄さんの黒曜石への愛着はとても米寿とは思えないほどパワフルで熱を帯び、石器作りや地質、歴史の話しになるとニコニコと嬉しそうに語り、この話はいつ終わるのだろうか?とこちらが心配になるほどその話しぶりはまさに達人。ぐいぐいと私たち参加者を古代へと引きこんでいきました。きっと2万年前にも本吉先生みたいな古代人が嬉しそうにコンコンと石器を割って周りの人に教えていたに違いない!そう思わずにはいられませんでした。

今回、2日に渡って現地ガイドをしてくれたベアバレーの熊谷さんは「いつの時代も人類は地球から何かしらの資源を取り出して生活に役立ててきた。そして現代でも同じことが行われており資源は限りがあり、その資源をどう生かすかこの石器は問い掛けている」と話し、この小さな石たちはこの地球での暮らし方を私達に教えてくれる貴重なメッセージなんだと感じました。

今回本ツアーを企画したHKワークスの方々、講師を務めて頂いた本吉春雄先生、そしてトレッキングガイドをしていただいた熊谷さんには古の北海道の魅力を教えて頂き、また貴重な財産を時代を超えて繋いできた遠軽町の関係者の方々に敬意を表したいと思います。ありがとうございました。
 

 T.Sさん / 北海道在住

自分は歴史に疎く遺跡や史跡、地球や人類の成り立ちのような話は自分はよく分からんと思い込んでた部分もありまして、こんなのが行ってもいいのだろうかと申し訳ない気持ちもありましたが、終わってみれば、武市さんの時もそうでしたが、庭より花より、石より国宝より、本吉春雄氏の人となりにすごく惹かれるものがある、と感じました。もちろんジオパークでのお話や石器作りの体験もとても勉強にもなりましたし、とてもワクワクしました。
 
自分はこういう地球の成り立ちや昔の人の思いとかを知る機会がなかったり、知ろうとしなかっただけで、本当はとても興味があるのかもしれないなぁと思わされる程でした。それか 何千万 何百万年も前の出来事や人々の生活が今の自分に繋がっているとやっと感じられる歳になったのか。やっと(笑)
今の時代、AIや機械で人間の出る幕が少なくなってきて、手で何かを作る、足を使って歩く、頭を使って考える、五感や六感で感じるということがどんどん少なくなってきている中、大災害などで電気ガス水道や携帯も使えなくなってしまった時、そんな時やはり先人の知恵や技術が生きるヒントになり、それを知っているのと知らないのとでは、また体験したことがあるのないのとでは生き方や考え方もきっと変わってくるのだろうと思いました。
 
どうやって今のこれからの若い世代にその様な事を伝えたらよいのか、まずは知ってもらうには?と思ったときに、武市さんや本吉さんのような達人たちの思いに触れたり生き方を感じたり、一緒になって冗談を言ったり笑い合ったり、そんな単純なことが本当に大切なことのような気がしました。
そしてお二人とも『俺は達人だゼ』などと偉ぶらず、若い者とも ちゃんと話してくれる、その気さくさがまた人を惹きつけるのだなと思いました。
そしてコレだっ!と一心不乱に打ち込んできた経験と自信があるとちょっとやそっとのことではへこたれないというか自分を曲げない頑固さというか、そこがまた人間臭くてとても愛嬌があるというか、またそこも魅力になるんですね。
 
クマガイさんのお話もとてもわかりやすく、いろいろ勉強しているなぁと感じましたしもっといろいろお話が聞きたかったですね。DNAの話もとても興味深かったです!
そしてまた夕飯のお店のチョイスも最高でした。黒曜石の国宝もさることながら、あの炉端のママも国宝級でしたね。黒曜石だけではなく、町の方々と触れ合うこともまたとても大切な時間なのだなと思いました。
 
最後に話したように、何千万年前にも本吉さんのような達人と呼ばれる人がいて、中堅がいて、若者がいて、子供がいて。子供たちは遊びながら見様見真似で石を割り、父ちゃんや爺ちゃんや達人の石器をいつか超えてやる!と自分で創意工夫して自ら学んでいき、成長し家族のために獲物を獲るようになり、女たちがそれを料理し子育てをし、男たちは栄養を摂りまた狩りに戻っていく…そんな景色が繰り広げられていたと想像すると、何千万年前もそんなに遠くないというかとても身近に感じてきます。
そしてその何千万年間の中の100年弱の自分の人生なんてホントに一瞬で儚いもので、だからこそ尊くて愛おしいなぁと改めてしみじみ思いました。

最後になりましたが、今回はとても貴重な機会を与えてくださり本当に有難うございました。